昭師(習作)

手探りです。
思いっきり手探りです昭師。
これで合ってるか、ぶっちゃけ全くわかりません。
わかりませんが、とりあえず18禁です←
なので、18歳未満の人は読んじゃダメですよー。


 夜が澱んでいた。
 窓も帳も、扉さえ閉め切った寝間の空気は湿り気を帯びて、艶めいた重さを増してゆく。
 見開いた目に映るのは、ただ暗いだけの天井だ。それも劣情に濁った眸には、酷くぼやけた景色にしか見えない。
 焦点のずれた愚策のようだ、と上手く働かない頭の片隅に思った。
「っ、ぁ……っ」
 身体の奥を緩く揺すり上げられて喉が反り返る。弾みで開いた唇から零れる媚声を、噛み殺すことすら考え付かなかった。
 撫でて、擦って、押し付けられて、幼子をあやすのにも似た媾合いは、徒に快楽ばかりを煽り立ててゆく。
 子元は元々、性的に淡泊な質だった。もちろん妻との閨事を疎かにしたことはないが、青楼に通い詰めるほど女に執着した覚えもない。だからといって、無論、不能というのでもなかったし、今この瞬間にそれは証明されている。ただ、身体を重ねて愛情を確かめ合うばかりが幸福ではないと、どこかで思っていたのだ。
 しかし、子上はそうではなかった。
 熱に浮かされたような目が何かと自分を追っているのに気付いたのは、まだ戦場の血腥さに不慣れだった頃のように思う。それから、生命の脆さを目の当たりにする日々を幾つ過ごしたか。ある時、意図を持って伸ばされた子上の手を振り解くどころか、子元は当たり前のようにそれに応じた。
 肯定を返した判断が間違っていたとは、未だに思ってはいないし、後悔もしていない。
 ただ一つ、淫楽とも言うべき快感を教え込まれてしまった事を除けば。
 社会秩序に基づいた生涯を送ったとするならば知りうる事のなかったその感覚は、子元が想像していたよりも深く重い。迂闊に踏み込んでしまった底なしの淵に潜む深泥のように纏わり付いては、理性を根こそぎ攫ってゆこうと狙っている。そうとわかっていて止められないのは、感性がそれを望んでいるからに他ならない。
 子上の手によって作り替えられてしまったこの身体を、いつか持て余す事になりはしないだろうか、と。
 詮無い懸念を、最近では不安に思ってばかりいる。
「ひぁ、っ」
 突然、下肢の奥に鈍い痛みを感じて、子元は目を瞠った。夢と現の狭間を漂っていた意識が、器に還る。
 己の身に何が起こったのか把握できないまま目を上げれば、温度を高くした子上の視線にぶつかった。
 目顔が何かを孕んでいる。
「……な、んだ……」
「色々、大変なのはわかってますけどね」
 喘ぐ息に扱き混ぜて言葉足らずに問い掛けてみはしたものの、子上はそれに答える事をせず、逆に働き詰めの日常を気遣う様子さえ見せた。
 嫌な予感がする。
 大儀を口癖にする子上が、こうして善意を露わにする時は往々にして何かを企んでいる事が多い。
 その結果がまた、確信をまさに具現化したようなろくでもない事ばかりなものだから、度々巻き込まれる身としては堪ったものではなかった。
 人好きのする、白い雲の一つとして知らない青空のような笑顔が、今は胡散臭く目に映る。
 それとも、被害者意識に囚われて、勘繰りすぎているだけなのだろうか。
 ふと脳裏を掠めた罪悪感は、しかし間違っていたと、子元は次の瞬間に身を以て悟った。
「でも……っ」
 胸を擦り寄せるようにして、子上が覆い被さってくる。
 体内に収めたままの太くて熱い塊にこれ以上はないと思っていた最奥を抉られ、強い刺激に声もなく子元は背を撓らせた。悲しくもないのに滲んだ涙を堰き止める眦の窪に、慣れない重みが掛かる。
「こんな時くらい、頭の中真っ白にしてくれてもいいでしょう?」
 塩辛い水滴を吸い取った唇が、耳元に囁いた。低く掠れた誘惑は甘く饐えた匂いがして、堕とされるだけだとわかっていても手を伸ばさずにいられない。
 猛毒に冒されてゆく期待に、身体が震える。
 素直な反応を直接的に受け止めた子上は喉の奥で密かに笑い、昂ぶったままのものを引き抜いた。
「ぅあ……ん、っ……」
 ずるり、と内襞が擦られるのにも悦を拾って喘ぐ。一分の隙もなく虚を満たしていたものが出て行く事には僅かの喪失感を禁じ得なかったが、それでも内臓を押し上げる圧迫感がなくなったのに安堵した。
 行動も、感情も、全ては知らぬ所で立てられていた筋書通りだったのかもしれない。
 うっそりと詰めていた息を吐き出すと、それを見計らっていたのだろう、子上の固い茎が根元まで一気に突き立てられた。
「ひ……っ、ああっ」
「俺の事だけ感じて」
「いっ、あっ、んぁっ」
 激しく抜き差しを繰り返され、背筋が仰け反る。突き上げられる度、馬鹿みたいに開いた口から上がるあられもない声を嫌悪する余裕さえ、もうなかった。
「気持ちいい?」
「ぃ、いい……あぁ……あ」
 問われ、答える。子上が満足げに微笑むのを、薄く開けた眸に捉えた。
 乱暴にされるのが悦いなど、浅ましい。
 頭の隅でそんな事を冷静に考えている理性の欠片も、刺し貫かれれば粉々になる。抹消に始まった悪寒のような戦慄きが脳髄に伝わって、子元は絶頂を迎えた。
 二度、三度と不随意に痙攣する後膣に締め上げられ子上もほぼ同時に達したのを、濡れた媚肉に感じる。
 放たれた精を受け止めながら、子元は息も絶え絶えに牀に沈み込んだ。
 いくら頑丈に出来ているとは言っても、昼夜の別なく酷使されては精も根も尽き果てる。唇がこめかみに優しく落とされても、もう瞼を上げる事すら叶わなかった。
 仮初めの死にある肉体は、業に沈む恋情の形代か。
 身動ぎの一つをも放棄した器を、子上が背後から掻き抱く。
「兄上……兄上」
 耳元に繰り返される熱を帯びた囁きは心を縛り付ける呪詛に似ている、と輪郭の曖昧になってゆく意識の中で子元は思った。
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